ビットコインと「信頼」の代償

06/12/2025

かつて、ビットコインは「存在しない問題を解決しようとしているだけだ」と指摘する声があった。しかし実際には、問題は常に存在しており、私たちは第三者の仕組みを当然のものとして信じすぎてきただけだ。その仕組みが静かに私たちを裏切ることに気付かないまま。

ある事例が分かりやすい。私の友人はベトナムの学校で8年間勤務していたが、最近になって学校が彼の所得税を一度も納めていなかったことを知った。結局、彼は追徴課税や煩雑な手続きに自力で対応せざるを得なくなった。雇用主が当然のように税務処理をしていると信じていたからだ。

この出来事は、信頼の代償が決して安くないことを示している。そして信頼しているシステムが崩れれば、その負担はすべて個人に降りかかる。

ビットコインはこうした問題を解決するために誕生した。第三者を信用する必要のない、透明で明確な仕組みを提供し、個人が安全に資産を直接管理できるようにするためである。

私も同じような問題を経験したことがある。故意であれ偶然であれ、結果は同じだ。私はお金も時間も、そして安心感までも失った。これら二つの例が示しているのは、特にお金が絡むとき、信頼は極めて脆いという事実だ。

現代経済は信頼の上に成り立っている。私たちは当然のようにこう信じている：
— 雇用主は正しく税金を納めてくれる
— 銀行はお金を安全に保管してくれる
— 政府は透明に通貨を管理する
— 弁護士は契約を明確に説明してくれる

しかし、仲介者が多くなるほどリスクは増す。だからこそ、ビットコインはその脆さを取り除くために生まれた。ビットコインは「信頼」を「検証」に置き換える。ブロックチェーン上で、コードによって透明に、改ざん不可能な形で契約が実行されるのであれば、誰かを信頼する必要はない。システムが正しく動けば、それで十分だ。

「税務トラブル処理産業」はこうして生まれた

システムへの信頼が崩れると、代償は単なる最初のミスだけでは終わらない。もっと厄介なのは、その後に続く無数の問題だ。

勤務先が税金を正しく処理していなかったり、銀行が資金管理を誤ったりすると、その後数カ月、時には数年もかけて、追徴金の支払い、書類の再提出、弁護士や会計士への相談などに追われることになる。ストレスは増え続け、財務トラブルの処理がまるで一つの「産業」のようになってしまい、時間もお金も消耗する。

考えてみてほしい。金融システムの欠陥を“修理”することで成り立つ産業が存在している。税務弁護士、コンプライアンス監査法人、規制当局、債権回収会社など…。毎年数十億ドルが、新しい価値を生み出すためではなく、失われた信頼の後始末のために費やされている。これは大規模な浪費そのものだ。

そして問題の根本には税制がある。多くの国では、税制は意図的に複雑に設計されている。特にアメリカでは、税法は高額な専門家を雇える人々に有利になるように作られている。富裕層や権力者は法律づくりに関わり、その法律をどのように利用すれば利益を得られるか熟知している。政府もそれを黙認する。なぜなら、一般市民の大半は何も言わず、ただ従って税金を納めるからだ。これは、支配層に利益をもたらし、官僚機構を肥大化させる暗黙の“取引”である。

ビットコインは税制の不透明性を打ち破る

ビットコインの仕組みは、税に関する情報を完全に透明化し、徴税をより簡単・直接的・不正が入り込めないものにするよう設計されている。どれだけ稼ぎ、どれだけ納めるか——すべて自動で実行され、誰でも検証可能だ。抜け道も、裏取引も、富裕層への特別優遇も存在しない。こうした世界では、法律と金融はエラー処理ではなく、生産性向上という本来の役割に立ち返る。

私たちには依然として弁護士や政策立案者が必要だ。しかし、不透明な制度の後始末を担う巨大な部隊は必要ない。現在の金融・法制度は社会を強くするどころか、不合理を利益源へと変えてしまっている。

ビットコインがもたらすのは、新しい通貨だけではない。透明性と責任を支える新しい基盤である。私たちが当たり前だと思ってきた無駄を可視化し、誠実さを不正よりも簡単かつ安価にする。

これこそが、長年続いてきた問題への解決策だ。

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参考文献